任意後見契約

任意後見制度とは

「任意後見制度」とは、十分な判断能力があるうちに、将来、本人の判断能力が低下した場合に備えて、あらかじめ自らが後見人になってもらう予定の人との間で、「どう生活したいか」「どのように財産を管理してほしいか」を決めておき、その内容を公正証書にします。

契約しておくことで、本人の判断能力が低下した後に、契約に基づいて予定された人(任意後見人)が、任意後見契約で決めた事務について、家庭裁判所が選任する「任意後見監督人」の監督のもと、本人を代理して契約などをすることによって、本人の意思にしたがった適切な保護・支援をすることが可能になります。

任意後見制度を利用する場合、任意後見契約と同時に、判断能力が低下するまでのケアとして、「見守り契約」「財産管理委任契約」を締結したり、本人がお亡くなりになった後のケアを目的として「死後事務委任契約」を締結したりしておくことを専門家としておすすめします。

任意後見契約のタイプ

任意後見契約は、「将来型」「移行型」「即効型」の3つの形態があります。本人の健康状態、生活状況、希望などによって選択することができます。

将来型

将来型の任意後見契約とは、任意後見契約のみを締結する形態です。

現時点では本人の判断能力が衰えていないため、本人の判断能力が低下する前には財産管理事務や身上監護事務を行うことを内容とする任意代理の委任契約は締結せず、将来、判断能力が低下した場合に備えて任意後見契約をするもので、本人の判断能力低下後に任意後見人のサポートを受けることだけが目的とされています。任意後見契約の効力が発生するまでは、特に委任関係は生じないため、本人がご自身で財産管理等を行うことになります。

将来型は、効力が発生するまでに相当の期間が経過する可能性があり、その間に本人の意思が変わってしまうことも考えられます。また、親族以外の第三者が任意後見受任者となった場合、本人の判断能力が低下したことを把握できず、任意後見監督人の選任申立てが遅れてしまう恐れもあります。よって、本人は任意後見受任者と定期的に連絡を取り、状況を把握してもらう必要があります。

移行型

移行型の任意後見契約とは、任意後見契約と同時に財産管理や身上監護等の事務を行うことを内容とする委任契約を締結する形態です。多くの方が、この移行型を利用します。

将来型の任意後見契約では、本人が身体の衰えや病気等で寝たきりになったとしても、判断能力が低下しなければ契約の効果が発生しませんが、この移行型の任意後見契約では、当初は委任契約に基づいて、本人の健康状態を把握するための見守り事務、財産管理事務、身上監護等の事務を行い、判断能力の低下後は任意後見契約に移行して任意後見事務が行われることになります。

委任する内容は本人の希望に応じて自由に決めることができ、本人の判断能力や身体能力が低下していない状態であれば、受任者は見守り事務だけを行うのが一般的です。もっとも、本人の判断能力が低下したにもかかわらず、任意後見契約に移行させないで、引き続き任意代理の委任契約に基づいて財産管理等の事務を行う事例も散見されます。任意後見契約に移行させない理由としては、家庭裁判所に対する任意後見監督人の選任申立ての手続きが分からない、本人の判断能力の低下に気づかなかったことなどが挙げられますが、中には、金銭着服等の不正行為を隠蔽する目的で、裁判所や任意後見監督人による監督を回避するために、あえて移行させない悪質な事例もあります。

即効型

即効型の任意後見契約とは、任意後見契約を締結した後、直ちに任意後見監督人の選任申立てを行い、任意後見契約の効力を発生させる形態です。

すでに本人の判断能力が少し衰えているが、契約を締結する能力があり、すぐにでも支援が必要な場合に、この任意後見契約の即効型を利用することが考えられます。

任意後見の即効型を利用したいと考えていても、公証人が本人の意思能力に不安を感じた場合は、契約書の作成を断られる可能性があります。公証人は面談等をしながら、本人が任意後見契約の内容を理解しているか確認します。公証人が本人の意思能力に問題があると判断した場合は、任意後見契約を締結することはできません。また、任意後見契約が締結されたとしても、本人の判断能力の低下の度合いによっては、契約時に必要な意思能力がないとして、後日、裁判等により契約が無効となる可能性もあります。

そもそも、任意後見契約は、今後、長期間にわたって本人の生活に重大な影響を及ぼす契約であるといえるので、本人が任意後見契約を締結するか否か、締結するとして、誰を受任者とするか、どのような契約内容にするかについては、極めて慎重な検討が必要です。本人が任意後見制度を理解できているか、また、本人が積極的に任意後見契約を締結したいという意思を有しているのか等が確認できない場合は、任意後見契約ではなく、法定後見制度(補助や保佐)の利用を検討すべきであるといえます。

任意後見人

任意後見人とは、本人との間で結んだ任意後見契約に基づいて、本人の財産管理や身上監護に関する事務を行う人です。

任意後見人は、本人の判断能力が低下した後、家庭裁判所の選任した任意後見監督人の監視を受けながら、契約内容に従って本人を支援します。

任意後見人の仕事に関する権限は、本人と結んだ任意後見契約によって決まりますが、大きく分けて次の2つです。

財産管理

財産管理とは、預貯金、有価証券、不動産など本人の財産を管理することです。

  • 自宅等の不動産の管理
  • 預貯金、有価証券の管理
  • 年金の管理
  • 税金や公共料金の支払い
  • 社会保障関係の手続き
  • 本人が行うべき法律行為(遺産分割協議や賃貸借契約など)など

身上監護

身上監護とは、医療、介護、施設入所に関する契約など、本人の生活に関する法律行為を行うことです。

  • 入院手続き、医療費の支払い
  • 生活費の送金
  • 要介護認定の申請などの手続き
  • 介護サービスの契約手続き
  • 施設入所手続き、介護費用の支払い

任意後見人の役割や仕事に含まれないもの

任意後見人の仕事は財産管理など、事務的に行うものがメインとなり、食事や入浴のお世話など、介護サービスを自ら提供する行為は、任意後見人の仕事ではありません。

法律行為や事実行為具体例
介護行為などの事実行為料理、入浴の介助、部屋の掃除、排泄のお手伝い
本人しかできない行為婚姻、離婚、養子縁組、遺言作成
日常生活で行う法律行為食材、日用品、衣服の購入
その他の行為本人の入院時に保証人になること
本人の債務について保証すること
本人が手術やリスクのある治療をする際の同意

任意後見監督人

任意後見監督人とは、任意後見人が任意後見契約に定められた内容にしたがって適切に仕事をしているかを点検したり、任意後見契約で定められた後見監督人の同意が必要な行為について精査する人です。

そのために職務内容や財産状況の報告を任意後見人に求めたり、自ら財産状況などを調査することもできます。また、点検した結果を家庭裁判所へ報告することも重要な仕事の一つになります。なお、任意後見人に不正な行為などがあった場合には、任意後見人の解任を家庭裁判所に申し立てることができます。

任意後見制度において任意後見監督人は、本人の安全や適切な財産管理を図るという点で非常に大きな役割を果たします。

本人の判断能力が低下し、任意後見契約を実行すべき適当な時期が来ると、任意後見人や関係者によって、任意後見監督人の選任申立てを家庭裁判所に行います。

申立てを受けた家庭裁判所は、任意後見監督人としてふさわしい人を選ぶことになりますが、任意後見監督人の仕事の重要性から家族や親族ではなく、弁護士や行政書士など第三者である専門家が選ばれることが多くなります。

任意後見監督人の役割と仕事内容

  • 任意後見人が契約内容に従って仕事しているか点検すること
  • 財産管理を適切に行っているか点検すること
  • 任意後見契約で後見監督人の同意が求められている行為について精査・同意すること
  • 点検した内容を家庭裁判所に報告すること
  • (任意後見人が不適任であると判断した場合)任意後見人の解任の申立て など

任意後見契約書の作成の流れ

任意後見契約を結ぶための任意後見契約書を作成する際の流れは、以下のとおりです。

1 任意後見契約書案の作成

任意後見契約を結ぶ相手と契約内容について決め、契約書案を作成します。契約書案は提出した後では変更できないので、細心の注意をもって作成するようにしましょう。契約書案の作成で盛り込むべき内容が決まらない場合や不明点がある時は、この時点から専門家に相談することをおすすめします。

2 公証役場における公証人との打ち合わせ

全国各地にある公証役場の中から行きやすい公証役場に連絡して予約を取ります。本人または受任者、もしくは委任状を持った代理人が役場を訪問し、契約書の作成の打ち合わせを行います。病気などの事情から本人が公証役場に出向けない事情がある場合は、公証人に病院や自宅まで来てもらうことも可能ですが、その場合は出張費用がかかる他、診断書の提出を求められることがあります。

3 任意後見契約公正証書の作成

打ち合わせの聴取をもとに、任意後見契約公正証書の原案が作成されてメール、ファックスや郵送により送付されます。その内容を確認の上、公正証書を作成する日程を決めます。本人と受任者が揃って公証役場を訪れて任意後見契約公正証書の内容を最終確認し、署名押印します。そこに公証人が署名押印することで、公正証書が完成します。

任意後見契約書 ひな形・サンプル

任意後見制度のメリットとデメリット

任意後見制度のメリット

  • 今現在、本人に判断能力の低下がなくても利用することができる
  • 本人の希望に近い柔軟な支援を受けることができる
  • 自分の信頼できる人に後見人を依頼することができる
  • 契約の内容について、後見人と納得のいくまで話し合って決めることができる
  • きめ細やかに自分の意思を契約内容に反映できるので、望みどおりの支援が受けられる
  • 契約内容が登記されるので任意後見人の地位が公的に証明される
  • 家庭裁判所で任意後見監督人が選出されるので、任意後見人の仕事ぶりをチェックできる
  • 死後事務委託契約も自分で締結できる

任意後見制度のデメリット

  • 契約の内容が多岐にわたるため、契約を締結する時点で、本人に契約内容を理解する判断能力が必要になる
  • 自分を支援してもらう後見人が遠方に居住している人では、頼りたいときに不便
  • 自分と後見人の年齢が近いと、自分が支援してほしくなった時に後見人も高齢になってしまうので、 後見業務を行うのが難しくなってしまう可能性がある
  • 自分を支援してもらう後見人との信頼関係を築くのに、時間がかかることがある
  • 法定後見制度のような取消権がないため、本人に不利な契約(悪徳商法等)だったとしても、任意後見人として取り消すことができない
  • 本人の判断能力の低下前に契約は出来るが、判断能力が低下して効力が生じるまで、実際に管理に着手出来ない
  • 後見人の報酬に併せて、後見監督人の報酬も負担となる
  • 本人の死後の事務や財産管理を委任できない(任意後見契約は本人が死亡すると同時に終了する)

成年後見制度の種類は大きく分けて、法定後見制度と任意後見制度の2つがあります。

このうち法定後見制度は、判断能力が不十分な場合に家庭裁判所に申し立てをして後見人を選任してもらうことで被後見人(本人)の財産・権利を守ります。また任意後見制度は、まだ被後見人(本人)に判断能力がある場合に被後見人によって将来に備え、代理人(任意後見人)を選び、代理権を与える契約(任意後見契約)を公正証書により作成して、あらかじめ契約を締結する制度です。

任意後見法定後見
成年後見人の選任本人が自分で選ぶ家庭裁判所が選任する
後見の内容本人が自分の希望をもとに内容を決める家庭裁判所が定める指針に沿って、成年後見人の判断で行う
後見監督人について後見監督人の選任が必須後見監督人の選任は裁判所の判断
利用の流れと開始① 本人が元気なうちに契約
② 本人の判断能力が低下
③ 家庭裁判所へ後見監督人選任の申立て
④ 後見監督人の選任
<後見の開始>
① 本人の判断能力が低下
② 家庭裁判所へ成年後見人選任の申立て
③ 成年後見人の選任
<後見の開始>
取消権の有無取消権がない取消権がある
居住用不動産売却の許可契約で定めておけば、裁判所の許可不要裁判所の許可が必要

ライフプランノート

任意後見契約を締結した後に、時間が経つにつれ、契約内容の一部を変更したいと考えることは当然起こり得ることです。しかし、任意後見契約の変更の手続きは簡単なものではありません。それゆえ、任意後見契約の内容や文言は、後日、できるだけ変更せずに済むように工夫がなされます。例えば、漏れなく網羅的に付与されていることが多いです。また、その表現においても、できるだけ限定的・具体的な文言ではなく、例えば「不動産の処分」といった抽象的な文言を用いることが一般的です。

しかし、任意後見人としては、単に「不動産の処分」の代理権を与えられただけでは、具体的に、何を、いつ、誰に、どのように「処分」するのかについて、委任内容が白紙の状態です。本人の意思を尊重すべきであることは当然のことですが、任意後見契約の効力が発生した後における不動産の処分時には、本人の判断能力が低下している以上、本人の意思を確認することは容易ではありません。

そこで、将来、具体的にどのように財産管理事務や身上監護事務が行われることを希望するのかについて、本人の判断能力が正常のうちに、あらかじめ本人が自分の考え方を具体的に記載したものが「ライフプランノート」です。したがって、「ライフプランノート」は、抽象的な内容を定めた任意後見契約を補完する位置づけになります。

このように、任意後見契約に加えて「ライフプランノート」を作成することによって、任意後見人としては、本人の意思を尊重しつつ、的確に財産管理等の後見事務を行うことができます。

見守り契約

見守り契約とは、任意後見制度が始まるまでの間、任意後見人となる人が本人を定期的に訪問したり、電話などで連絡を取り合ったりする契約です。定期的に連絡を取り合うため、本人は体調の変化や悩み事などの相談を行う事ができ、また支援する側も本人の判断能力の有無などを確認することができます。

ご本人に家族の方がいらして日々の状態を把握してくれる場合は良いのですが、ひとり暮らしをしている方、同居されている方でも同居人も高齢者である方や、近くに親族がいない方などに有効です。もし見守り契約を結んでおかなければ、ご本人の判断能力が低下したことを誰も確認することができず、家庭裁判所への任意後見監督人選任の申立てをされない可能性があります。このような場合、せっかく任意後見契約を締結したにもかかわらず、その準備が意味をなさない状況に陥ってしまう恐れがあります。

見守り契約の内容は、定期的に電話連絡で近況確認を行うことや、2、3ヶ月に一度、直接面会して、健康状態や生活環境のチェックを行うといった内容が多いです。なお、「見守り契約」は、自由な契約なので、「週1回は電話で連絡」「月1度は直接面会」という具合に、当事者間で自由に内容を決めることが可能です。

また「見守り契約」には、ご本人の状況確認以外にも、大きなメリットがあります。それは、将来、任意後見人になる人と、定期的に連絡や面会をすることにより、多くのコミュニケーションをとることができ、信頼関係を構築しやすいという点です。任意後見が開始された後、自分に代わって代理行為をしてくれる人が「どういう人なのか」、「自分の判断能力が低下した後、しっかり後見業務をしてくれる方なのだろうか」といったことを、判断能力があるうちに、じっくり見極めることができます。見守り契約中に、将来後見人になってくれる人の対応を確認できるわけですから、任意後見契約の見直しや解除という選択肢も検討することができ、「将来に向けた安心」という意味では、とてもよい契約といえます。

財産管理委任契約

財産管理委任契約とは、自分の財産の管理についての権限(代理権など)を与える契約のことをいいます。財産の管理をするためには、銀行や市役所などを訪問する必要がある場合があります。寝たきり状態や、車椅子での生活で自由が効かない、手が不自由になってきて文字が書きづらいなどの場合には、このような財産管理に関する様々な行為が大きな負担になることがあります。ひとり暮らしをしている方、同居されている方でも同居人も高齢者である方や、近くに親族がいない方などには、財産管理委任契約が有効です。

財産管理委任契約のメリットとしては、本人の判断の能力が十分である場合でも利用できることです。成年後見は後見人に財産管理を任せられるのですが、この制度を利用することができるのは、本人の判断能力がなくなってしまった後です。財産管理委任契約は、本人の判断能力があるうちでも本人の財産管理を行うことができます。契約の内容次第では、本人が判断能力を失ったあとにも、財産管理や、亡くなった後の財産管理についても規定しておくことが可能です。

一方で、財産管理委任契約にはデメリットもあります。 まず、契約の内容が適切に守られているかを監督するような公的なチェックがないことです。任意後見契約の効力が発生した後であれば、任意後見監督人が、本人に代わり任意後見人をチェックしてくれます。しかし、財産管理契約では、本人の判断能力がしっかりしているということが前提になっているため、自分で適切に監督する必要があります。もし、本人の判断能力が衰え始めたときに受任者が、家庭裁判所に任意後見監督人選任を申し立てずに引き延ばしてしまうと、本人には、受任者をチェックすることができなくなります。そのため、財産管理委任契約に、第三者を監督人とすることを盛り込むことで、本人の安心感につながります。 また、受任者を複数人にすることで、相互のチェックが働くことも考えられます。

なお、財産管理委任契約を締結することで、一定の財産管理における手続きを代行してもらえるようになりますが、金融機関によっては財産管理委任契約を締結していたとしても対応してもらえないことが多くあります。そのため、財産管理委任契約を締結することを想定している場合は、自分の口座がある金融機関で「財産管理委任契約での窓口対応が可能か否か」を事前に確認しておきましょう。

また、財産管理委任契約は契約ですので、相手方とどのような内容の契約をするかを決めて契約をすることになります。親族以外の人と契約を結ぶ場合には、親族側から契約について疑問に思われてトラブルになるようなことがあります。そのため、本人の意思に基づくものであることを確認するために、公正証書で作成しておくことが望ましいといえます。

死後事務委任契約

死後事務委任契約とは、自分が亡くなった後の手続きを、生前のうちに特定の誰かにお願いする契約のことです。契約内容は自由ですが、生前中の入院費や施設費等の未払いや、葬儀埋葬費の支払い、市役所等への届出などを依頼するのが一般的となっています。

通常は、親族等により行われることになりますが、近くに親族がいない方や、家族や親戚がいても、その人に頼りたくない方などは、死後事務委任契約を締結することが考えられます。

死後事務委任契約では、亡くなった後の手続きの契約ができますが、財産継承については効力を持ちません。一方、遺言書は財産継承にのみ効力を持つため、葬儀や遺品整理などの希望を書いても、通らないことがあります。死後事務委任契約だけを結んでも財産承継には対応できず、遺言書だけを作成しても葬儀や遺品整理などの死後事務は任せることができません。そのため、死後事務委任契約と遺言書は両方、用意しておくと安心です。

ただし、どちらも不備や内容に問題があると、無効になってしまう可能性があります。死後事務委任契約や遺言書の内容に確実な効力を持たせたい場合は、公正証書として作成することをおすすめします。

尊厳死宣言書

尊厳死宣言書とは、自分が延命のための治療を拒否し、尊厳死・自然死を望むという意思を表示する書面です。生前に行う意思表示として、「リビング・ウィル」とも呼ばれます。

これにより、病院の医師等の医療関係者や、大事なご家族に対して、自分の意思を伝えることができます。

この尊厳死宣言の書面には、必ずそれを実行しなければならないという法律上の義務は課せられません。しかし、一般財団法人日本尊厳死協会の調べでは、尊厳死の宣言書を医者に提示した場合に、9割を超える割合で、本人の希望が受け入れられたという調査結果があります。近年において、尊厳死宣言書の実現の可能性はかなり高いといえるでしょう。

なお、尊厳死宣言について大切なことは、その宣言が、「健常時」に「本人の意思」に基づいてされたことを明確にすることです。そのため、本人が、公証人の面前で尊厳死を希望するということを述べ、その本人の強い意思に間違いないこと、本人確認ができる身分証明などによりその宣言者本人に相違ないことを公正証書で作成する必要があります。

当事務所からのアドバイス

任意後見契約は、契約内容、後見人の選任、後見監督人の存在など、法律の手続きの中でも、かなり複雑な契約といえます。契約書の作成においては、ご本人のニーズに応えられる支援を実現するため、それぞれのご事情やご希望を丁寧に検討し、それに合った契約条項をつくることがとても重要になります。当事務所では、今後備えるべき点を助言し、ライフプランノートや契約条項の作成をお手伝いします。また、ファイナンシャルプランナーでもありますので、ご依頼人が思い描くライフプランが資産面において実現可能か、検討いたします。専門的知見をもとに、ご依頼人に最適な内容の契約書を作成させていただきますので、お気軽にご相談ください。

Q&A

任意後見制度とは、どんな制度ですか。

本人に十分な判断能力があるうちに、あらかじめ、任意後見人となる方や将来その方に委任する事務の内容を公正証書による契約で定めておき、本人の判断能力が不十分になった後に、任意後見人が委任された事務を本人に代わって行う制度です。

任意後見契約を締結するには、どうすればいいのですか。

任意後見契約を締結するには、任意後見契約に関する法律により、公正証書でしなければならないことになっています。その理由は、委任者本人の意思と判断能力をしっかりと確認し、また、契約の内容が法律に従ったきちんとしたものになるように、長年、法律の仕事に従事し、法的知識と経験を有する公証人が作成する公正証書によらなければならないと定められているのです。

任意後見契約書は必ず公正証書にしなければいけないのでしょうか。

はい。任意後見契約書は、必ず公正証書で作成しなければなりません。公正証書でない任意後見契約書は、効力を生じません。

認知症により本人の判断能力が既にやや低下しているのですが、任意後見契約を締結できますか。

もちろん本人の判断能力がなければ、任意後見契約は締結できません。しかし、認知症であるからといって直ちに判断能力が欠けていると評価されるわけではありません。公証人において、委任者本人や関係者からの説明、医師の診断等を参考に個別に判断能力の有無を判断し、公正証書が作成できるかどうかを決めることになります。

病気等で公証役場に出向くことができないときでも、任意後見契約を締結することができますか。

公証人が、自宅や病院に出張して公正証書を作成することができます。

任意後見契約に、身の回りの世話や介護をお願いする事項も定めることができますか。

できません。任意後見人の行う事務は法律行為に限られます。したがって、身の回りの世話などの事実行為を任意後見契約で定めることはできません。ただし、身の回りの世話に関する法律行為は定めることはできます。例えば、介護契約の締結、介護保険利用のための要介護認定の申請、介護施設等への入所契約の締結・報酬支払い等があります。

任意後見人は、いつから委任された事務を始めるのですか。

任意後見契約は、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時から効力を生じます。任意後見人は、この時から、任意後見契約で委任された事務を本人に代わって行います。なお、任意後見人となる方は、本人の判断能力が低下した場合には、速やかに任意後見監督人の選任の申立てをすることが求められます。

任意後見人を1人ではなく、複数人選任することはできますか。

できます。任意後見人の人数に制限はありません。

任意後見監督人の役割は何ですか。

任意後見監督人の役割は、任意後見人が任意後見契約の内容どおり、適正に仕事をしているかを、任意後見人から財産目録などを提出させるなどをして監督することです。また、本人と任意後見人の利益が相反する法律行為を行うときに、任意後見監督人が本人を代理します。任意後見監督人はその事務について家庭裁判所に報告するなどして、家庭裁判所の監督を受けることになります。

任意後見監督人には、どのような人が選ばれるのでしょうか。

任意後見監督人は、家庭裁判所によって選任されますが、その役割等から、本人の親族等ではなく、第三者(弁護士、行政書士、社会福祉士等の専門職や法律、福祉に関わる法人など)が選ばれることが多くなっています。なお、任意後見人となる方や、その近い親族(任意後見人となる方の配偶者、直系血族及び兄弟姉妹)等は任意後見監督人にはなれません。

任意後見監督人をあらかじめ自分で選ぶことはできますか。

できます。任意後見契約において、あらかじめ任意後見監督人を選任しておくことも可能です。ただし、これは任意後見監督人の推薦という程度の意味しか持ちません。家庭裁判所は、任意後見監督人の推薦に拘束されず、家庭裁判所の判断で任意後見監督人を選ぶことができます。

任意後見契約を締結した後に、取りやめることや変更することはできますか。

任意後見契約を解除(取りやめ)することは可能です。任意後見監督人が選任される前であれば、公証人の認証を受けた書面によっていつでも解除できます。任意後見監督人が選任された後は、正当な理由があるときに家庭裁判所の許可を受けて解除することができます。また、任意後見契約のうち、代理権の範囲など(登記事項に関する部分)については変更できません。既存の任意後見契約を全部解除して、新たな任意後見契約を締結することになります。これに対し、報酬額など(登記事項に関する部分以外)については変更することが可能です。ただし、その場合も公正証書による必要があります。

任意後見契約は登記されるそうですが、どうしてですか。

任意後見契約が締結されると、公証人の嘱託により、契約内容が指定法務局(東京法務局)で登記されます。これは、本人の判断能力が不十分な場合は本人自ら契約等をすることができないので、任意後見人が本人を代理してすることになり、その場合には、委任状に代わる代理権限を証する書面が必要となります。この登記がされると、任意後見人は、法務局から、任意後見人の氏名や代理権の範囲を記載した「後見登記事項証明書」の交付を受けて、自己の代理権を証明することができます。取引の相手方も、任意後見人から、その「後見登記事項証明書」を見せてもらうことにより、安心して本人との取引を行うことができます。この後見登記事項証明書は、国の機関が発行する信用性の高い文書で、銀行等の金融機関への届出の際にも必要となります。

判断能力は低下してないが、足腰が弱り何事をするにも不自由になった場合、財産管理等を任意後見契約できますか。

任意後見契約によることはできませんが、通常の「財産管理の委任契約」を締結することにより対処することができます。このような通常の委任契約を任意後見契約と併せて締結することができます。

法定後見の利用をするか、任意後見をしたいのですが、その前後のことが心配な場合、どうしたらいいのでしょうか。

成年後見制度はあくまでも、本人の判断能力が低下してから死亡するまでの事務を行うためのものですから、必要に応じて、元気なうちの「見守り契約」「財産管理委任契約」、また死亡時の葬儀・納骨・身辺整理等を行う「死後事務委任契約」、死亡後の財産の行き先を定める「遺言」なども検討するといいでしょう。

料金表

任意後見契約書原案の作成55,000円~
見守り契約書の作成33,000円~
財産管理委任契約書の作成33,000円~
死後事務委任契約書の作成33,000円~
尊厳死宣言書の作成33,000円~
任意後見契約業務月額 22,000円~
見守り契約業務月額 5,500円~
財産管理委任契約業務月額 11,000円~
死後事務委任契約業務別途見積
※税込みの料金になります。
※法定費用、書類の取り寄せにかかる郵送料等は、実費分を別途ご負担願います。
※上記以外のご相談も承りますので、お気軽にお問い合わせください。