遺産分割協議書

遺産分割協議書とは

遺産分割協議書とは、遺産分割協議の結果をまとめた書類です。

まず、遺産を分割する方法には3つあります。①被相続人(亡くなった人)の遺言によるもの、②相続人全員の協議によるもの、③家庭裁判所での調停によるものです。

誰がどのような割合で遺産を引き継ぐのか、遺産の分け方について、遺言による指定がある場合には、これにしたがって分けることになります。また、遺言がない場合には、民法に相続分の割合が規定されています。しかし、相続人全員で合意すれば、遺言の内容や法定相続分とは異なる割合で遺産を分けることができます。

相続が開始すると、被相続人(亡くなった人)の持っていた土地や建物などの財産は、原則としていったん相続人全員の共有となります。しかし、共有状態のままでは、土地や建物を有効活用することは困難です。また、銀行口座は凍結され、原則として、相続人が単独で預金を払い戻すことはできません。これらの状態を解消するために行うのが、遺産分けの話し合いである「遺産分割協議」です。遺産分割協議では、「土地、建物は配偶者が取得して、A銀行の預金は長男が取得して、B証券会社に預託している有価証券は長女が取得する」というように、誰がどの遺産をもらうのかを決めていきます。遺産分割協議を成立させるには、相続人全員が合意しなければなりません。音信不通の相続人、行方不明者や未成年の相続人などを除いて遺産分割協議をしたり、いわゆる隠し子が存在することを知らずにその子を含めずに行った遺産分割協議は無効となります。

遺産分割協議が無事に成立した場合には、遺産分割協議の結果をまとめた書類である「遺産分割協議書」を作成します。誰がどの財産を相続するか、ということを詳細に記載します。そして、その遺産分割協議書に書かれた内容で合意していることを証するため、一般的に相続人全員が実印で押印します。

なお、法律上、遺産分割協議は口頭だけでも成立するため、遺産分割協議書は必ず作成しなければならない書面ではありません。しかし、口約束だけだと、後々になって「合意していない」「言った、言わない」という争いが生じる可能性があります。こうしたトラブルを避けるためにも、話し合いの証拠となる遺産分割協議書を必ず作成するようにしましょう。

なお、協議が調わないときは、家庭裁判所に審判の申し立てをすることができます。

法定相続人の確定

被相続人(亡くなった人)の財産を相続する方を、法定相続人といいます。誰が法定相続人となるのか、民法に詳しい規定がありますので、まずは法定相続人を正確に確認することから始めます。自分には権利がないのに法定相続人と勘違いしている場合や、法定相続人であるのに知らずにいる場合もあります。 法定相続人でない方が参加したり、法定相続人である方が参加しなかったりした遺産分割協議は無効になります。

相続人調査

相続人調査とは、被相続人の相続人が誰なのかを明らかにし、その証明のための資料を収集するための調査です。 大半のケースでは、相続人調査などしなくても、相続人が誰なのか把握できているでしょう。 しかし、当人たちが分かっていても、名義変更等の相続手続き、相続放棄、相続税の申告等の手続きにおいては、誰が相続人なのかを証明する資料が必要となります。 また、遺族が知らない相続人がいることもあります。例えば、被相続人に養子や非嫡出子(認知した婚外子)がいる場合があるのです。このような理由から、相続人調査が必要なのです。

相続人調査の方法・手順

相続人調査では、基本的には、①被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等、②相続人全員の現在の戸籍謄本を収集することになります。ただし、代襲相続がある場合や、被相続人の兄弟姉妹が相続人となる場合は、さらに多くの戸籍謄本が必要になります。
代襲相続とは、相続人となるべき者(被代襲者)が、相続開始以前に死亡しているときや相続欠格または廃除により相続権を失ったときにおいて、その被代襲者の直系卑属(代襲者)が被代襲者に代わって、その受けるはずであった相続分を相続することをいいます。代襲相続がある場合は、被代襲者の出生から死亡まで(死亡していない場合は現在まで)の戸籍謄本等と、代襲者全員の現在の戸籍謄本が必要になります。また、兄弟姉妹が相続人となる場合は、被相続人の父母などの直系尊属それぞれの出生から死亡までの戸籍謄本等が必要になります。

被相続人の戸籍謄本等を収集する場合、出生から死亡まで一つの戸籍に留まる人は稀で、多くの人は、生きていく中で、養子縁組、婚姻、離婚、分籍、転籍によって、複数の戸籍を渡り歩きます。
相続人調査では、死亡時の戸籍から遡って出生までの戸籍を収集しなければなりません。 なお、戸籍謄本だけでなく、除籍謄本や改製原戸籍謄本が必要になることが多いです。 除籍謄本とは、除籍簿に綴られた戸籍の謄本のことをいいます。通常、各戸籍は戸籍簿に綴られています。そして、戸籍の構成員が、養子縁組、婚姻、離婚、分籍、転籍、失踪宣告、死亡などによって、除籍(その戸籍から除かれること)になることがあります。そして、構成員全員が除籍になった戸籍は、戸籍簿から除かれ除籍簿に綴られます。被相続人が除籍になった戸籍が除籍簿に綴られている場合は、相続人調査において、その除籍謄本が必要になります。
改製原戸籍とは現行以前の戸籍制度による戸籍のことをいい、その謄本のことを改製原戸籍謄本といいます。戸籍制度は、戸籍法の改正による戸籍の管轄省令により変更されます。戸籍制度が変更されて、戸籍を作り変えた(改製した)場合に、その元になった戸籍のことを、改製原戸籍というのです。被相続人が生きている間に戸籍の改製を経ていれば、相続人調査において、その改製原戸籍謄本が必要になります。

相続財産の確定 

相続財産の確定は、財産目録を作成することと同じことになります。被相続人がどのようなご資産を残されたのか、ご遺品からひとつひとつ確認していきます。銀行口座の預金残高、株式など有価証券、生命保険、入院保険、各種権利金、自動車などです。ご自宅も、自己所有であれば相続財産になります。土地、田畑、山林、マンション、アパートなど、被相続人が所有されている不動産も一覧にしていきます。その評価は、売買の相場価格ではなく、税金上の評価額である路線価格を使用します。たとえ売却する予定であっても、財産目録上は、路線価格を使用することに注意が必要です。ただし、遺産分割協議で、実際に売れた金額を分割すると決定したときは、財産目録とは別に、遺産分割明細として、実際の金額(たとえば売却金額から不動産会社手数料など実費を控除した金額)を記載します。

遺産分割協議書の作成

遺産分割協議書には、決められた書式はないのですが、客観的に第三者が見ても、内容が分かるように、明確に記載する必要があります。書類が完成したら、相続人全員が署名押印(実印)し、印鑑証明書を添付します。これは、第三者が勝手に書類を捏造することがないようにするためです。作成した遺産分割協議書に、本人しか所有していないはずのものである実印を押印し、印鑑証明書を添付することで、間違いなく、本人の意志であることの証明になります。作成後に、「言った、言わない」「あれはそのときに思っただけで本意ではない」などと、決定を覆したり、とぼけたりすることができなくなります。また、第三者に対しても、遺産分割協議が間違いなく実施されたことを証明することができます。遺産分割協議書に書かれた内容は、相続人全員が遵守し、実際の遺産分割は、協議書記載のとおりに実行されるべきものとなります。

遺産分割協議書の作り直し

一度作成し、全員が署名押印し完成した遺産分割協議書を勝手に作り直すことは、原則としてできませんが、相続人全員が同意すれば、遺産分割協議書の内容を変更することができます。ただし、税務上の問題など、遡及して変更することができないものもありますので注意が必要です。遺産分割協議書の内容を変更したいときは、あらたに遺産分割協議書を作成し、新しい日付で全員が署名押印すれば、新しいものが有効になります。このときに、後々のトラブルを防止するためにも、新しい遺産分割協議書の冒頭には、「令和○年○月○日に作成した遺産分割協議書を取り消し、新たに本書を作成する」といった趣旨の文言を入れておくとよいでしょう。

遺産分割協議書が必要なケース

法定相続分どおりに遺産分割しない場合

民法では遺産分割の目安になるよう法定相続分を定めています。法定相続分どおりに分割する場合は、遺産分割協議書の作成は不要ですが、法定相続分とは違う割合で相続する場合には、遺産分割協議書が必要となります。

不動産の相続登記がある場合

被相続人が建物や土地などの不動産を所有していた場合、これらの不動産は不動産登記上、被相続人の所有物となっているので、不動産の所有権を相続人に移すために相続登記をする必要があります。そして、この手続きを法務局で行うためには、法務局に対して被相続人が死亡したことや、自己が相続人であり、該当する不動産が遺産分割によって自己に所有権が移ることなどを証明する必要があります。

複数の預貯金口座を解約する場合

預貯金口座についても、金融機関指定の用紙に相続人全員が署名押印することで、遺産分割協議書の作成が不要になるケースもあります。
ただし、取引銀行が多い場合は、解約の度に相続人全員の署名押印が必要になるため、遺産分割協議書を作成しておいた方が効率的でしょう。

相続税申告が必要な場合

相続財産が基礎控除を上回ると、相続税申告が必要になります。相続税申告も遺産分割協議書が必要となるケースが多く、相続税の申告期限は被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内となっており、期限を過ぎると納税額が増える場合がありますので、遺産分割協議書は早めに作成するほうがよいでしょう。

遺言で触れられていない相続財産がある場合

被相続人が遺言書を残している場合には遺産分割協議書が不要になるケースがあります。しかし、遺言書に記載されていない相続財産がある場合には遺産分割が必要になり、遺産分割協議書の作成も必要になります。

遺産分割協議書が不要なケース

遺言書に従って遺産分割する場合

被相続人が有効な遺言書を残している場合には、遺言書に記載されている内容が遺産分割や遺産分割協議書に優先します。これは被相続人の意思を尊重し反映するためです。

相続人が1人しかいない場合

相続人が1人しかいなければ、遺産分割協議書の作成は不要です。もともと1人しかいない場合もありますが、相続放棄をした人がいたため1人になる場合もあります。また、相続欠格や廃除によって相続権をはく奪された人がいたために相続人が1人になる場合もあるでしょう。なお、推定相続人がすでに死亡していても、その人に子がいれば代襲相続が発生し、親の相続権は子に引き継がれます。代襲相続人が複数人いれば遺産分割協議が必要になり、財産内容や分割方法によっては遺産分割協議書も必要となります。

法定相続分どおりに遺産分割する場合

遺産の分割方法として、民法で定められた割合である「法定相続分」での分割があります。この法定相続分で相続をする場合には、不動産に関する法務局での手続きにおいて遺産分割協議書の提出は求められておらず、金融機関における手続きにおいてもほとんどの場合で求められていませんので、遺産分割協議書は不要となります。しかし、そのほかの相続財産が後に発見された場合に、再分割することも考えられます。その際には事情が変わっているかもしれませんので、たとえ法定相続分で分割する場合にも実務的には遺産分割協議書を作成することをおすすめします。

相続財産が現金や預貯金口座だけの場合

現金は相続手続きそのものが発生しないため、遺産分割協議書を作成する必要がありません。預貯金口座の場合も、金融機関指定の用紙に相続人全員が署名押印するだけで解約手続きが完了する場合があります。

遺産分割協議書の完成後

遺産分割協議書を作成し、相続人全員の署名押印が完了したら、それと同じものを相続人の人数分用意し、各自で保存します。これによって各自で相続財産の移転手続きなどの相続手続きを行うことができます。また、遺産分割協議書どおりに遺産分割が行われていないなどのトラブルを回避できるだけでなく、もしトラブルが起きてしまった場合でも、相続人が各自で遺産分割協議書を保有しているので、それが証拠となりトラブルを解決できることも期待できます。

遺産分割協議書 ひな形・サンプル

法定相続情報証明制度(法定相続情報一覧図)

法定相続情報証明制度は、被相続人と法定相続人の相続関係を法務局の登記官が認証する制度です。戸籍謄本と相続関係を一覧図にしたものを法務局に届け出ると、法定相続情報一覧図の写しが交付され、相続財産の名義変更等の手続きに利用することができます。

法定相続情報証明制度のメリット

法定相続情報一覧図を入手しておけば、以下のようなメリットがあります。

  • 戸籍謄本が不要になる
  • 複数の相続手続きを同時進行できる
  • 何回でも無料で再発行できる

戸籍謄本を揃えて相続手続きする場合、謄本の返却と提出を繰り返すため、手続きの同時進行が困難となります。戸籍謄本を相続手続きに必要な通数を揃えると費用もかさみますが、法定相続情報一覧図は無料で複数枚入手できるので、相続手続きの同時進行が可能になり、費用も抑えられます。また、法務局の保管期間中(5年間)であれば、何回再発行しても料金はかかりません。

法定相続情報証明制度のデメリット

法定相続情報一覧図を入手するときは、以下のようなデメリットもあります。

  • 入手までに時間と手間がかかる
  • 正確に作成しなければ認証されない
  • 相続人に変更があれば再作成が必要
  • 法定相続情報一覧図を使えない機関もある

一覧図の作成には戸籍謄本一式が必要なので、一度は役所に出向いて戸籍を揃える必要があります。作成を間違えると認証されず、相続人に変更があれば再作成も必要です。法定相続情報一覧図を使えない金融機関等もあるので、作成前に確認しておくとよいでしょう。

法定相続情報一覧図を使用する場合

法定相続情報一覧図は以下のような相続手続きに使用します。

  • 被相続人名義の預貯金解約や払い戻し
  • 不動産の名義変更(相続登記)
  • 株式や投資信託等の名義変更
  • 自動車や船舶等の名義変更
  • 税務署への相続税申告
  • 未支給年金の請求

相続財産の種類が多い方や、相続税申告が必要な方には、法定相続情報一覧図の取得をおすすめします。特に相続税申告は「相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」の期限があるので、同時進行する相続手続きがある場合に一覧表が役立ちます。

遺産分割の時的限界

遺産分割に関する期限としては、相続税の申告に関する10ヶ月の期限や相続放棄の3ヶ月の期限があります。他方で、改正前民法では、遺産分割協議には、特に期限は設けられていなかったため、相続人が相続開始から何十年も遺産分割協議をしていなくても、特段不利益は生じませんでした。しかし、令和5年施行の改正民法では、遺産分割協議において相続開始の時から、10年を経過した後にする遺産分割については、原則として、具体的相続分(法定相続分を前提に、相続人それぞれの個別具体的な事情を考慮することで決められる相続分)によるのではなく、法定相続分によることとなりました。

遺産分割に関する新たなルールとは、どのようなものなのか。

相続の開始(ご家族が亡くなったとき)から10年を経過した後にする遺産分割は、原則として、特別受益(例えば、生前贈与を受けたこと)や寄与分(例えば、療養看護等の貢献をしたこと)を考慮した具体的相続分ではなく、法定相続分または遺言によって定められた相続分(指定相続分)によって画一的に行うこととされました。

遺産分割に関して、新たに期間制のルールが設けられたのはなぜですか。

相続が発生してから遺産分割がされないまま長期間放置されると、相続が繰り返されて多数の相続人による遺産共有状態となる結果、遺産の管理・処分が困難になります。また、遺産分割をする際には、法律で定められた相続分(法定相続分)等を基礎としつつ、特別受益や寄与分を考慮した具体的な相続分を算定するのが一般的です。しかし、長期間が経過するうちに具体的相続分に関する証拠等がなくなってしまい、遺産分割が難しくなるといった問題があります。そこで、遺産分割がされずに長期間放置されるケースの解消を促進するため、遺産分割に関する期間制限が設けられました。

新しいルールについては、令和5年4月1日までに開始した相続についても適用されますか。

はい。新たなルールは、令和5年4月1日までに開始した相続についても、それが何年前に開始したかにかかわらず適用されますので、注意が必要です。

令和5年4月1日までに相続が開始した場合には、令和15年3月31日までの10年間は、具体的相続分による遺産分割が可能ですか。

いいえ。令和5年4月1日までに相続が開始した場合でも、具体的相続分による遺産分割をすることができるのは、基本的に、相続の開始から10年間に限られます。ただし、令和5年4月1日の時点で、すでに相続開始から5年を超える期間が経過しているケースについては、令和10年3月31日までの間は、具体的相続分による遺産分割をすることができるよう、猶予期間が設けられています。このように、令和5年4月1日までに相続が開始した場合には、具体的相続分による遺産分割が可能な期間が限られますので、お早めに遺産分割をされるよう、おすすめします。

具体的相続分による遺産分割を確実にするためには、どのようにすればよいですか。

相続の開始から10年経過するまでに、家庭裁判所に遺産分割の請求(調停や審判の申立て)をすれば、具体的相続分による遺産分割をすることができます。なお、10年経過後も、相続人全員が合意をすれば、具体的相続分による遺産分割をすることは可能です。

遺産分割をした後には、登記をする必要がありますか。

令和6年4月1日から、相続登記等の申請が義務化され、遺産分割により不動産の所有権を取得した方は、遺産分割をした日から3年以内に、遺産分割の内容に応じた所有権の登記の申請をすることが義務付けられます。令和6年4月1日より前に遺産分割をされた場合でも、令和9年3月31日までに登記の申請をすることが義務付けられますので、お早めに登記をされることをおすすめします。

相続登記義務化

相続登記がされない場合、所有者不明土地の所有者を探索するには、その相続人の調査のために戸籍謄本などの収集や、相続人への連絡など、多大な費用と時間が必要となるケースも少なくありません。そのため、所有者不明土地がある場合、地方公共団体の公共事業のための用地取得や民間の土地取引が、円滑に行えない可能性があります。また、所有者不明土地の多くは適切な管理がなされていないため、雑草などの繁茂による景観の悪化や害虫の発生、土地上の空き家の倒壊など、その土地を含む周辺地域全体の環境の悪化につながる危険性もあります。そこで、これらの所有者不明土地の発生を予防するために不動産登記法が改正され、相続登記が義務化されることになりました。

  1. 相続登記の義務化を含む法改正は、令和6年4月1日から施行されます。
  2. 相続人が、相続や遺贈で不動産を取得したことを知った日か3年以内に相続登記の手続きをすることが義務化され、これを怠った場合は10万円以下の過料が課されます。
  3. 相続人が遺贈を受ける場合、その人単独で相続登記の手続きができるようになります。また、一旦、法律上の相続割合に応じて相続登記をした後、遺産分割によって取り分が変わった場合にも、他の相続人の協力なしに、不動産を取得した人が単独で相続登記の手続きをすることができるようになります。
  4. 令和6年4月1日より前に発生している相続についても義務化の対象になります。例えば、令和2年に相続した不動産について相続登記していない場合、令和9年3月31日までに相続登記をしなければ罰則の対象となります。
  5. 万が一、相続開始から3年以内に遺産分割協議がまとまらず、相続登記ができない場合、相続人であることを法務局に申告することで、相続登記をする義務を一時的に免れることが可能になります。相続人であることを報告し、法務局が登記簿に申告者の氏名・住所を記録することで、所有者不明土地を発生させるリスクを低減させることに繋がります。その後、無事に遺産分割協議がまとまり、実際に不動産の権利を取得した場合には、その日から3年以内に相続登記をしなければ過料の対象となるので注意しましょう。
  6. やむを得ない事情があり、相続登記が期限に間に合わない場合には、罰則を免れるケースもあります。
  7. 所有者である個人または法人の氏名(名称)や住所(本店)に変更があった場合、その日から2年以内に変更登記をすることが義務化されます。これを期限内にしなかった場合は5万円以下の過料が課されます。なお、住所変更登記についても相続登記と同様、法改正以前の変更も義務化の対象となります。また、やむを得ない事情がある場合には、期限に間に合わなくても罰則を免れる可能性はあります。
  8. 新たに個人が不動産登記を申請する場合には、生年月日、氏名、住所などの情報を法務局に提供されることが義務化されます。
  9. 住民基本台帳ネットワークシステム等から所有者(法人・個人)の氏名(商号)や住所(本店)が変わったことを法務局が認識したときは、登記官の判断で氏名(商号)や住所(本店)の変更登記ができるようになります。もっとも、所有者が個人の場合はプライバシーに考慮し、本人の意向を確認し、申出がある場合のみとされています。これは、住民基本台帳ネットワークシステム、または、商業・法人登記システムから所有者の情報が変更されたことが分かるようにして、法務局が自動的に氏名や住所などの変更登記をできる仕組みを作るためです。
  10. 法務局で自身が所有者になっている不動産の一覧(所有不動産記録証明書)を所在地に関わらず、一括で取り寄せることが可能になります。ただし、所有不動産記録証明書に記載されている所有者の情報は、常に更新されているわけでなないため、その時点で記載されている情報に一致しているものしか確認できないという問題点もあります。
  11. 相続で土地を取得した場合、その所有権を放棄して土地を国庫へ帰属させる(国へ返す)ことが可能になります。現在の法律では、一部の財産だけ相続放棄することはできません。そのため、相続したくない土地があっても、現預金など相続したい財産があれば相続放棄することはできないのです。法改正によって、不要な土地だけの相続放棄(所有権放棄)が認められれば、相続時に土地の所有権だけを放棄して、他の遺産は相続するという方法を取ることが可能になります。

当事務所のアドバイス

実際、遺産分割協議書は自分で作成することもできますが、作成するには、時間と手間がかかりますし、相続財産の漏れや大事な文言を記載していない場合等の不備があり、遺産分割できない可能性もあります。遺産分割協議書に不備があると、記載の訂正が必要になります。特に、被相続人の相続財産に関する記載の訂正には、相続人全員の押印が必要となります。自分で作成する時間がない方や、不備があった場合に自分で修正する等の手間をかけたくない方、話し合いに集中したい方、他の手続きをしたい方などは、当事務所にお気軽にご相談ください。当事務所は、ご依頼人のお話を伺い、今までの遺産分割に関する豊富な実績を活かし、ご依頼人に満足いただける内容をご提示し、ご依頼人の不安を解消し、安心できるよう尽力いたします。

Q&A

遺産分割協議書には、相続人全員の署名押印が必要でしょうか。

原則として、遺産分割協議書には相続人全員の署名押印が必要になります。ただし、相続放棄をしている相続人や相続分を譲渡している相続人については、遺産分割協議書への署名押印は不要です。

遺産分割協議が成立した後、新たに見つかった遺産はどうなるのですか。

原則として、すでに作成された遺産分割協議書は有効なものとして、新たに発見された遺産についてのみ、改めて遺産分割協議を行うことになります。まずは、遺産分割協議を行う際に、しっかりとした財産調査を行うことが大切です。また、遺産分割協議の際に、新たに発見された遺産の取得者や、取得の割合等を事前に決めておくこともできます。

遺産分割にあたって債務(借金)はどのようにすればよいですか。

相続人が法定相続分の割合にしたがって当然に債務を負担することになります。しかし、相続人間で遺産分割協議書において、債務を特定の相続人が支払うよう合意することは可能です。このような合意をした場合、相続人内部間では、特定の相続人がすべての債務を負担することになります。

共同相続人のなかに、未成年者とその子の親権者がいる場合はどうすればよいですか。

未成年者の法定代理人である親権者が、その子に代わって遺産分割手続きに参加することになりますが、その親権者も相続人である場合は、子と親権者は利益相反の関係(親権者が多く取得するという利益が子の取得分が少なくなるという不利益になる関係のこと)にあることから、その親権者はその子のために、 家庭裁判所に対して、特別代理人(親権者に代わって未成年者を代理する人)の選任の申立てをする必要があります。また、親権者を同じくする複数の未成年者が共同相続人の中にいる場合、その親権者がそれぞれの未成年者の法定代理人として遺産分割手続きに参加することになりますが、その一人の子と他の子は利益相反の関係にあることから、この場合についても、その親権者は他の子のために、家庭裁判所に対して、特別代理人の選任の申立てをする必要があります。

共同相続人の中に、認知症などにより判断能力が十分でない者がいる場合はどうすればよいですか。

成年後見制度を利用することになります。判断能力の程度に応じて、「後見」「保佐」「補助」の3つの類型があり、その制度により選ばれた成年後見人、保佐人または補助人がその相続人に代わって、遺産分割に参加することになります。ただし、保佐人や補助人が遺産分割の調停や協議を行うためには、遺産分割の調停や協議をすることについての代理権を与える旨の審判を家庭裁判所に申し立てる必要があります。

相続人の一部に生死不明者がいる場合、どのように遺産分割をすればよいですか。

生死不明者がいる場合は、①家庭裁判所に不在者の財産管理人選任の申立てをし、選任された財産管理人が不在者に代わって他の相続人と遺産分割協議をする方法と、②家庭裁判所に失踪宣告の審判申立てをし、その審判を得て、生死不明者が死亡したものとみなして、生死不明者の相続人が代わって遺産分割協議を行う方法があります。

不動産の金額はどのようにして決めるのですか。

基本的には、当事者の合意で決められた金額に基づいて処理をすることになります。金額を決める方法の例として、固定資産税評価額、相続税評価額、公示価額及び不動産業者による査定額などがあります。金額に合意ができない場合は、鑑定をすることになります。

特別受益とは何ですか。

相続人の中に、被相続人から遺贈や多額の生前贈与を受けた人がいる場合、その受けた利益のことを「特別受益」といいます。その場合には、利益を受けた相続人は、いわば相続分の前渡しを受けたものとして、遺産分割において、その特別受益分を遺産に持ち戻して(特別受益の持戻し)具体的な相続分を算定する場合があります。特別受益は、寄与分とともに法定相続分を修正するもので、共同相続人間の不平等を是正し、実質的平等を図ることを目的としています。したがって、共同相続人が同程度の利益を受けている場合には、持戻しをしないことが多いです。

寄与分とは何ですか。

相続人の中に、被相続人の財産の維持または増加に特別の貢献をした人がいる場合、遺産分割において、その人の貢献の度合い(寄与分)に応じてその人の相続分を増やして、具体的な相続分を算定する場合があります。貢献の内容としては、被相続人の事業に関する労務の提供(家業従事型)、財産上の給付(金銭等出資型)、被相続人の療養看護(療養看護型)、その他の方法がありますが、寄与分が認められるためには、親族間において通常期待される程度を超えた貢献が必要です。単に、他の相続人と比較して貢献の度合いが大きいというだけでは寄与分にはなりません。

遺産の分け方にはどのような方法があるのですか。

遺産の分け方は、①遺産そのものを分ける「現物分割」、②相続人のうち、1人または数人が遺産そのものを取得し、現物を取得した相続人がその他の相続人にお金(代償金)を支払う「代償分割」、③遺産の全部または一部を複数の相続人が共有で取得する「共有分割」、④遺産を売却して、その代金を分割する「換価分割」の4つがあります。

被相続人(亡くなった人)の預金口座がどこにあるか調べる方法はありますか。

税金の申告書、戸籍謄本を準備して銀行を訪れる等の方法により調査することができます。被相続人の預金口座については、相続人であれば書類の開示を受ける権利があります。実務上、金融機関名と支店名が特定されていれば、金融機関は現在の残高、過去の取引の履歴についての資料の開示に応じてくれます。また、訪れた支店には口座はなくても他の支店には口座がある場合、相続税申告のために必要であるなどの事情を説明すれば、他の支店の口座を教えてくれることもあります。

料金表

遺産分割協議書原案の作成55,000円
相続人調査(法定相続情報一覧図含む)33,000円
(相続人3人までの料金。4人目以降1人につき5,500円を加算)
法定相続情報一覧図の作成11,000円
相続財産目録の作成22,000円
公正証書作成手続き11,000円
相談業務(1時間あたり)4,400円
※税込みの料金になります。
※法定費用、書類の取り寄せにかかる郵送料等は、実費分を別途ご負担願います。
※上記以外のご相談も承りますので、お気軽にお問い合わせください。